【2021年】共通テスト英語・リーディングを徹底分析&対策【今後の勉強法は?】

入試解説

 

先日共通テストが初めて実施されました。

 

英語は分量が大幅に増え、センター試験に比べるとかなり難化したと思います。単純な文法・発音問題がなくなり、全て読解問題になったのが大きな特徴です。

 

今回は、共通テストを分析するとともに、今後どのように英語の勉強を進めていくべきかについて、どこよりもわかりやすく&丁寧に解説してみました。

 

全体概観

まずは全体像を見てみましょう。

 

共通テスト英語 概観

<分量>

  • 制限時間は80分
  • 語数は約5500語、問題数は47問(大問の数は6)
  • つまり、1問を約1分半のペースで解く必要がある(150語/分程度の速読力は欲しい)

 

<解き方>

  • 英文の題材は多種多様。メッセージのやり取りからスケジュール調整、人工甘味料の話など
  • 解答の根拠となる箇所は散らばっている
  • つまり、設問に先に目を通し、その後問題文をざっと読み通す解き方が有効と思われる

 

※ ちなみに、イギリス英語の出題がありましたが、リーディングに関しては正直そこまで気にしなくても良いと思います(多少スペル等が違う程度で、アメリカ英語がキッチリ読めているのであれば、イギリス英語であっても対応可能です)。

 

分量

まず、分量は非常に多いです。1問を約1分半で解く必要があります。

 

大量の英文を限られた時間内で処理する必要があります。全ての設問をきっちり解き、9割程度の得点率を目指すのであれば、150語/分程度の速読力がないときついと思います。

 

 

1分間で150語読めるとすれば、5500語の英文は約37分で読み終えられることになります。設問を解く時間を加味すると、80分という制限時間の半分程度の時間で、問題文自体に目を通せるスピードは欲しいところです。

 

解き方

題材はメッセージのやり取り(LINE的なもの)からスケジュール調整、人工甘味料など多種多様です。

 

解答の根拠となる箇所が問題文のあちこちに散らばっているのがややこしいところです。「第一段落を読んだら問1を解き、第二段落を解いたら問2を解き…」という戦略はあまり通用しません。

 

 

したがい、問題文の全体像を把握したうえで設問に取り組む必要があります。

 

解き方としては、

  1. まずは設問にざっと目を通して「何が問われているのか」を大まかに確認
  2. 問題文全体をざっと読む(カギになりそうな情報はこの時点で拾っておく)
  3. 設問と問題文を照らし合わせつつ、設問を解いていく

という手順が基本戦略になってくるのかなという気がします。

 

 

今後、各予備校が模擬試験棟を作成するでしょう。それに取り組む際、上記の戦略をベースに、細かい解き方を自分なりにアレンジしてみると良いと思います。

 

大問別の分析

次に大問別の分析をしていきたいと思います。

 

難易度や時間配分も付記してみました。目安くらいに考えてください。

 

大問1 A

LINE風のショートメッセージのやりとりでした。

 

難易度は「易」です。問題文の順番に設問の解答の根拠となる箇所が並んでいます。目標時間は2分。

 

無駄な絵文字(はあと)や、一つ一つのメッセージが長くてキモイ、登場人物のJulieがダメ人間過ぎることを除けば、特に注意すべきところはありません。

 

取りこぼすことなく、さっさと終わらせてしまいたい問題です。

 

大問1 B

ミュージシャンのファンクラブに関する情報を読み解く話です。なんとなくTOEICと似た雰囲気があります。

 

難易度は「標準」です。設問の根拠となる記述が問題文中に散らばっているのが、少し鬱陶しいです。ざっと問題文に目を通したうえで、一つ一つ情報を照合していく能力が求められます。

 

目標時間は5分。大問2以降の時間配分や難易度を考えると、やはりテンポよく正解してしまいたい問題です。

 

大問2 A

バンドコンテストに関する情報を読み解く問題です。やはりTOEICっぽいです。

 

難易度は「標準~やや難」で、根拠となる記述があちこちに散らばっています。英文自体は難しくないのですが、記載内容を理解し、まとめるのにちょっとした思考力も必要です。目標時間は8分。

 

ちなみに、factとopinionの違いは、

  • fact: 事実(=客観的な事実、数字などの客観的な事実に基づく
  • opinion: 意見(=主観的な意見、誰かの意見)

です。

 

たとえば、アメリカの大統領選に関する話題で言えば(先日大統領選があったので。共通テストとは関係ないですが)、以下のようにfact/opinionは分けられると思います。

  • fact: トランプは選挙に落ちた/トランプのtwitterアカウントが停止された/「たくさんの人が選挙へ行くと思う」とテレビのコメンテーターが言った
  • opinion: トランプは皆に嫌われている/トランプのtwitterアカウントがなくなり残念だ/たくさんの人が選挙へ行くと思う

 

 

 

今回の設問に即して言うと、問3の問題は「どれがfactか」を問うものでした。

 

選択肢に下記のようなものが並んでいましたが、どちらも記述自体は本文中にあるものでした。

  • 皆がグリーンフォレストの歌を褒めた ⇒fact
  • グリーンフォレストはもっと練習する必要がある ⇒opinion

 

 

しかし、正当となる選択肢以外はopinion(単なる意見や感想)なので、選んではいけません。したがい、似たような問題に取り組むことで、fact/opinionの区別をつける練習を積む必要があるでしょう。

 

※ちなみに、英語だけに関わらず、将来生きていくうえで、fact/opinionを区別することはとても大切です。わたしの経験上、両者を区別出来ている大人はあまりいない気がします。(これはopinionですね)

 

 

なお、超どうでも良い情報ですが、「それぞれのバンド名は日本の件名に対応しているのでは?」との説が濃厚です。(試験を解くのには一切関係ありません笑)

  • Green Forest ⇒青森
  • Silent Hill ⇒静岡
  • Mountain Pear ⇒山梨
  • Thousand Ants ⇒千葉 (antは「aunt: 叔」のこと?)

 

大問2 B

学校の規則に関するオンライン上のやり取りを読み解く問題です。これもTOEICっぽいです。

 

難易度は「標準~やや難」で、根拠となる記述があちこちに散らばっています。目標時間は7分。

 

ここでもfact/opinionの区別を求める問題が出題されています。

 

大問3 A

旅行のスケジュールの情報を読み解く問題です。

 

難易度は「やや難」で、根拠となる記述があちこちに散らばっています。図にある表面的な数字だけを見て解くと引っ掛かります。

 

目標時間は4分。

 

大問3 B

留学生の手紙を読み解く問題です。

 

難易度は「標準」です。他の問題に比べると、情報があちこちに散らばっている印象はあまりないです。

 

目標時間は8分。

 

大問4

先生とのメールのやり取りを読みつつ、表やグラフの情報をまとめる問題です。これもいかにもTOEICっぽいです。

 

 

難易度は「難」です。情報を拾いつつ、それをまとめて理解する必要があります。断片的な記述だけに基づくと、引っ掛かってしまいます。

 

目標時間は12分。

 

ここは多少とりこぼしても仕方ない気がします。時間をかけ過ぎて他の問題を解けなくなるのは最悪なので、ある程度の所で見切りをつける勇気も必要かもしれません。

 

大問5

動物に関する物語を読み、それをもとにプレゼンテーションの資料を完成させる問題です。

 

難易度は「難」です。「プレゼン資料のどこに穴があるのか?」を念頭におきつつ情報を拾っていく必要があります。

 

32~35は、空欄4個に対して選択肢が5個あるので要注意です。これもプレゼン資料と付き合わせたうえで問題を解かないと、大幅な時間ロスにつながってしまいます。

 

目標時間は14分。

 

ここも多少のとりこぼしは許容しても良い気がします。それよりも、分量が多いので、あまり時間をかけ過ぎないように注意しましょう。

 

大問6 A

アイスホッケーに関する話を読み、それをもとに資料の穴埋めをしていく問題です。

 

難易度は「難」です。

 

問題数の割に分量が多いです。やはり、丁寧に読み過ぎると時間が足りなくなります。問題文全体に一度ざっと目を通し、その後設問を解きながら必要な情報がありそうな箇所を改めて読み直すやり方が良いでしょう。

 

目標時間は12分。

 

 

文章自体はそれほど難しくはないですが、やはり情報が落ちている箇所をピンポイントで拾っていかないと、時間内に解ききることは難しいです。時間がなければ、途中で適当に切り上げる勇気も必要でしょう。

 

大問6 B

人工甘味料に関する文章を読み、その内容に合う選択肢を選んでいく問題です。

 

難易度は「難」です。

 

やはり問題文が長いのと、甘味料の名前が一見ゴツイ(LCSsなど)ので、人によっては問題文自体を難しいと感じるかもしれません。

 

他の問題同様、ひとまず全体にざっと目を通し、その後解答の根拠となる箇所にあてをつけて、そこを読み込む解き方が良いでしょう。

 

 

目標時間は12分。

※ここまで、問1~6の所要時間を合計すると5分余るようにしてあります。残りの5分は見直しや、問題の解答が計画通り進まなかった場合の保険として使ってください。

 

対策

以上を踏まえると、来年以降受験をする高校生は、下記のような方針で勉強していくと良いでしょう。

 

ポイント
  1. 問題形式に慣れておく(本試験や追試験の他、各予備校の予想問題を解く。TOEICの問題は積極的に解く必要はない)
  2. 普段から音読を取り入れ、英語の処理速度を上げておく
  3. 文法の重要性が下がったわけではない(正確な読みが読解力のベースとなる)、単に文法の4択問題を満足する勉強法はNG

 

問題形式に慣れておく

まずは問題形式に慣れておくことが大切です。

 

解答の根拠となる箇所が文中のあちこちにちらばっており、それを適切に拾い上げ、まとめる力が要求されます。各予備校が模擬試験棟を実施すると思うので、それらは出来るだけ全て解き、問題形式に慣れるようにしましょう。また、本試験と別に実施される、追試験は必ず解くようにしましょう。

 

その際は、

  • どの問題に/どの程度時間をかけるのか
  • どこに/どのように解答の根拠があったのか

を確認できると良いです。

 

 

なお、問題形式はTOEICに似通ったところがありますが、TOEICの問題集を解くのはあまりお勧めできません。

 

なぜなら、TOEICで扱われるのはビジネス系の文脈が多く、使用される単語等もビジネス系に偏りがちです。また、解答の根拠となる箇所が共通テストほど散らばってはいないので、厳密には共通テストとは似て非なるものです。

 

したがい、TOEICの問題集等に積極的に手を出す必要はないと思います。

 

※どうしても気になる方は下記の公式TOEIC Listening & Reading 問題集 7を一冊買って目を通して見てください。「ああなるほどな」と納得して頂けると思います。

 

普段から音読を取り入れ、英語の処理速度を上げておく

普段から音読を取り入れ、英語の処理速度を上げておくことが重要です。

 

共通テスト程度の難易度の文章であれば、最低150語/分で読める力を目指しましょう。これは、450語の英語であれば、大体3分で読める力ということです。

 

本文を読む時間の他、問題を解く時間を加味するとこの程度の力は目指したいところです。

 

 

英文の処理速度を上げるためには、音読がとても有効です。

 

具体的には、

  1. まずはゆっくりとで良いので、辞書等を引きつつその英文の意味・構造を100%理解する
  2. 100%理解した英文の意味を意識しつつ、何度も音読する(一つの文章を少なくとも30~50回

という手順で音読を行います。

 

 

理解していない英文を音読しても、英文の処理速度を上げることにはつながらないので、まずは英文の意味や構造を100%理解しきることが大切です。そのうえで、同じ例文をくどいくらい何度も何度も音読しましょう。

 

正直、50回どころか100回やっても良いくらいです。例えば、同じ英文を「一日5回×10日」のように、毎日何度も繰り返しましょう。ピアノやスポーツの練習と同じで、ほぼ無意識のレベルで意味を理解できるくらいになることが目標です。

 

※ちなみに、典型的なダメな生徒はこの反復練習を嫌います。ここを疎かにすると成績は伸びません(100万人に1人とかの超天災なら別かもしれないですが)。

 

 

なお、音読は英語の音に慣れることにもつながるので、リスニングにも超有効な対策となります。というより、音読なしのリスニング対策とかありえません。音読せずにリスニングの勉強をやっているのであれば、それは時間の無駄です。

 

音読するときは自分流の適当な発音をしても意味がないので、必ずネイティブの音声を真似するようにしましょう。その意味で、読解の教材を選ぶときには、ネイティブの音声付きの教材を選ぶようにしましょう。音声のない読解教材は、その時点で論外です。勉強する価値がほぼないと言っても過言ではないです。

 

 

たとえば、読解用の教材としては速読英単語 必修編[改訂第7版] (Z会文章の中で覚える大学受験英単語シリーズ)がおススメです。

 

単語帳も兼ねた読解教材です。必修レベルの英単語をバランスよく含んだ長文が数十本収録されており、これ一冊やり込めば、共通テストに必要な単語は大体カバーできます。

 

 

CDが別売りである点には要注意ですが、これ一冊で

  1. 読解力
  2. 単語力
  3. リスニング力

をバランスよく鍛えることが出来るので超オススメです。

 

一石三鳥で、学習効果はとても高いと思います。

 

 

 

ちなみに、早慶以上のレベルを狙うのであれば速読英単語2上級編[改訂第4版]もこなしておきたいところです。難易度の高い単語が含まれるとともに、英文自体の難易度も結構高いです。

 

このレベルの長文をある程度読めるようになっていれば、共通テストレベルの英文の読解はかなり楽になるでしょう。こちらもCDは別売りなので注意してください。必ず一緒に購入するようにしましょう。

 

 

他には、速読英熟語もおすすめです。熟語に焦点を絞り、やはり様々な英文が集められています。英文自体の難易度はやや低めなので、まずはコチラからチャレンジしてみても良いかもしれません。

 

文法の重要性が下がったわけではない

文法の重要性が下がったわけではないということには注意が必要でしょう。

 

たしかに、表面上は文法問題は消えました。しかし、「なんとなくの雰囲気」で文章を読んでいくと、正確な読解にはつながりません。正確な読解力がないと、試験で安定して高得点を取ることは出来ません。

※もっと言うと、不正確な情報処理能力は、実社会でも役に立たないです。

 

 

正確な読みを支えるのは、正確な文法力です。その意味で、文法については一通りの理解をしておくことが肝要です。重箱の隅をつつくような細かい文法知識に囚われる必要はないですが、最低限の知識は100%身につけておく必要があります。

 

 

文法系の参考書のおススメは、今井の英文法教室(上)今井の英文法教室(下) (東進ブックス 名人の授業)です。上下巻セットになっています。

 

語り口が柔らかく読みやすい(そしてちょくちょく笑える)のに、説明自体はきっちりと本質に迫っています。これを100%やり込めば、ひとまず基礎となる英文法力を作り上げることが出来ます。

 

 

文法系の問題を解く際に注意してほしいのは、「正解してそれで終わり」にしないことです。

 

最低限、下記のレベルは目指すようにしてください。

  • 「なぜその解答になるのか」という根拠を100%説明できる
  • 問題文全体を正確に全訳できる

 

 

共通テストの問題は、実際の英語運用に近いもので、個人的には悪くない出題形式と思います。

 

しかし、英文法を軽視する学生が量産されてしまいそうな点がやや懸念されます。くどいようですが、「正確な読みは正確な文法力に裏付けされている」という点を強く意識し、英文法の勉強に取り組んでくださいね。

 

おわりに

いかがでしたか?

 

分量が多く、一見難易度の高い共通テストですが、1年間しっかり対策をすれば、必ず対応することが可能です。

 

本記事が受験生の皆さんの参考になったのであれば嬉しいです。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。質問等あればコメント欄にて受け付けます。

 

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