今回は東大の要約問題を解説(2020年2月実施分)してみたいと思います。
要約問題を解く際の心構えにも注意しつつ、ポイントをわかりやすくまとめてみたいと思います。
なお、問題の本文は各予備校発表のモノを参考にしてください。(著作権の関係上)
・河合塾
・駿台
・代ゼミ
・東進
※東進は過去の問題も一気に見られます。登録がややめんどうですが。
あと、赤本を購入しても良いですね。全訳が付いていますし。
東大の要約問題(2020年2月実施分)の本文を読む
要約問題を解くにあたり頭において欲しいのが、
- 1つのポイントを含めるのに20~30字程度必要
- 優先順位は「テーマ/主張」>「論拠」>>>「具体例」
- 対比構造に意識しつつ読む
というポイントです。
2020年の問題は70~80字という字数制限があるので、「含められるポイントはせいぜい2~3点ではないか?」ということを念頭において解答を作成していきましょう。
なお、要約問題全般に関する話(要約問題を解く際の姿勢)の詳細は、下記の記事にまとめてあります。あわせてお読みくださいね。
第1段落
さあ、第1段落から読み進めていきましょう。
日本語での問題文に「高齢者にやさしい(age-friendly)町づくり」との記述がある通り、
今回のテーマ/主張は「高齢者にやさしい(age-friendly)町づくり」になりそうです。
第1段落の前半部分(~a vision that takes into account all ages.まで)では、
・高齢者に優しい町づくりのムーヴィメントが出てきた
・多くのモデルは、社会的つながりの重要性を強調し、全世代を考慮した理想(vision)を促進している
とあります。
高齢者向けの町づくりが社会にとってのテーマになる中で、「どんなモデルに基づき町づくりをすればよいのか?」と様々なモデルが出てきたわけですが、その多くは高齢者だけではなく、若者世代も含めた形での町づくりをし、社会のつながりを強める方向に進めるべきだ、と提言しているわけです。
そして、第1段落の後半です。
なぜ前半と後半で分けたかというと、”For example (例えば)”という表現があるためです。
これって、「後ろに具体例を出しますよー」というマークなのです。
つまり、
- 優先順位は「テーマ/主張」>「論拠」>>>「具体例」
という原則に基づいて考えると、ここから先は要約に含めなくても良い可能性が高いのです。
(もちろんケースバイケースなので、100%排除して良いわけではないですが)
さらに言うと、For exampleの後ろは、その前のやや抽象的な文章を具体例で置き換えているはずです。
つまり、「抽象的な部分⇔具体例の部分」は、本質的には同じ事柄について同じ角度から語っているわけなので、単語や構文がわからず、一部読めない部分があったとしても、かなりの程度まで推測することが可能です。
この観点から、第1段落の後半を読み進めていきましょう。
前半部分は、
・高齢者に優しい町づくりのムーヴィメントが出てきた
・多くのモデルは、社会的つながりの重要性を強調し、全世代を考慮したヴィジョンを促進している
と述べ、
後半部分 (For example以下)では、
・国連 (the United Nations)のアナン氏の発言
⇒①全世代向けの社会というのは全ての世代を受けいれるものだ
⇒②各世代がバラバラになるのではなく、異なる世代を含め、各世代共通の利益を認識し、それに基づいて行動するのだ
と述べられています。
要するに、前半部分の「多くのモデルは、社会的つながりの重要性を強調し、全世代を考慮したヴィジョンを促進している」を具体例で言い換えているだけなのですね。
そして、わざわざ具体例を示すくらいなので、ここが文章全体のポイントになってくるのかな?と予測することも出来ます。
第2段落
WHOやその他の国際機関の発言が続きます。
なんとなく、先ほどの国連(やはり国際機関です)の話の続きのような気がします。
そういう思いで読み進めていくと、第2段落の最後の方に、
WHO endorses~ (WHOは~を支持している)、
~factors which influence health throughout the life course (人生全体の健康に影響する要因)
との記述があります。
「人生全体の~」という点に注目してください。
ざっくり言ってしまうと、WHOやほかの国際機関も、「若年期~老年期の全てを考慮した町づくりが良いと言っている」というのがこの段落の趣旨です。
やはり、第1段落の国連の話の続きのようです。どちらかと言えば具体的な記載がなされており、要約に含める優先順位は低そうです。
第3段落
冒頭がムチャクチャ大切です。
「however: しかしながら」という単語をでっかくマルで囲んでやってください。
日本語でもそうですが、「○○だ。しかし△△だ」のように論を進める場合、話のポイントは△△の部分にくるのですね。
「しかし」等の単語の後ろは、重要な記述がある可能性が非常に高いです。
howeverの後ろをきちんと見ていくと、
・実際は高齢者に優しい町づくりというのは、主にolder adultsやcare givers、service providersに主に焦点を当ててきた
・そのため、若い世代に関するデータを収集出来ていない
と続いていきます。
もし対比構造を意識しつつ英文を読めていれば、ここで次のような対比構造に気づくことが出来るはずです。
・第1~2段落 ⇒理想 (vision):全世代を考慮した町づくり
・第3段落 ⇒現実 (practice):older adults (=より年老いた大人、つまりは老人)中心の町づくりになっている。若い世代のデータを収集できていない。
対比構造を意識すると、こんな風に全体の流れがつかみやすくなることが多々あります。
この対比構造を意識しつつ、さらに文を読み進めていきましょう。
第4段落
理想と現実の間のギャップを説明するのは何なのか?
そんな問いかけから第4段落(最終段落)が始まります。やはり、「町づくりに関する理想⇔実際」という対比構造の文脈で、文章が続いていきます。
One answer may~では、
・一つの答えは、老人に良いことは全世代にとって良いことだ、という仮定にあるのかもしれない
と述べられています。
その後ろのin other words(言い換えると、つまり)では、その仮定の内容を具体的に言い換えています。ほぼイコールの内容が語られているだけなので、サッと読み流してしまいましょう。
「その仮定(=老人に良いことは、全世代に良いことだ)がなぜ間違っているのか?」に関する考察が後ろで続きます。
曰く、
・最近の研究では、若い世代 (young adults)と老人世代 (older adults)の投票パターンや投票への態度が、1970年代以来、最高に広がっている
とのことです。
(ここでも「若者⇔老人」という対比の構造が見られますね)
これを踏まえたうえで最後に、
・全世代にとって何が良い町なのかを理解するためには、様々な世代からデータを収集することが重要だ
と締めて文章が終わっています。
各世代の嗜好が変わってきている以上、全世代からデータを集めなければ、全員にとって良い社会は実現できないだろう、というわけですね。
最後の一文に、”it is critical to~(~するのは重要だ)”という表現が使われている点にも着目しましょう。
筆者が「重要だ」と言っているくらいなので、やはりこれも要約に含めた方が良い可能性が高いです。
東大の要約問題(2020年2月実施分)の解答を作成する
主に対比構造を踏まえたうえで、各段落の流れをザクっとまとめてみましょう。
第1段落
<前半>
・高齢者に優しい町づくりのムーヴィメントが出てきた
・多くのモデルは、社会的つながりの重要性を強調し、全世代を考慮した理想を促進している
<後半>
・国連 (the United Nations)のアナン氏の発言
⇒①全世代向けの社会というのは全ての世代を受けいれるものだ
⇒②各世代がバラバラになるのではなく、異なる世代を含め、各世代共通の利益を認識し、それに基づいて行動するのだ
第2段落
・第1段落後半の具体例の続き。WHO等の国連以外の機関の意見を述べている
第3段落
・実際は高齢者に優しい町づくりというのは、主にolder adultsやcare givers、service providersに主に焦点を当ててきた
・そのため、若い世代に関するデータを収集出来ていない
第4段落
・一つの答えは、老人に良いことは全世代にとって良いことだ、という仮定にあるのかもしれない
・最近の研究では、若い世代 (young adults)と老人世代 (older adults)の投票パターンや投票への態度が、1970年代以来、最高に広がっている
・全世代にとって何が良い町なのかを理解するためには、様々な世代からデータを収集することが重要だ
字数制限が70~80字とかなり厳しいです。含められるのはせいぜい2~3点です。
「理想⇔現実」という対比を元に解答を作成してみると、下記の通りになります。
<解答例>
高齢者にやさしい町づくりには全世代を考慮するべきだが、実際は高齢者にばかり焦点が当たっている。世代間で考えが異なるため、全世代からデータを収集することが重要だ。
(80字)
ポイントは下記の通りです。
・高齢者にやさしい町づくりのためには~
⇒今回の文章のテーマ/主張。ここを外すと0点の危険アリ
・全世代を考慮すべきだが、実際は高齢者にばかり焦点
⇒「理想⇔現実」の対比。大きな構造として、ここを外すとやはり大幅減点では?
・世代間で異なるので、全世代からのデータ収集が重要
⇒上記の対比構造を踏まえたうえでの筆者の主張。主張なので、やはり要約には含めるべき
要約は慣れが大切です。大切なのは何度も演習を繰り返すことです。
とりあえずは、
・文章全体の流れをつかむこと(今回なら対比構造に着目)
・要約時に気をつけるべきパターンに慣れること(howeverの後ろや「重要だ」という部分には筆者の主張が来やすいこと)
を意識しつつ、改めて今回の文章を読み返してみてくださいね。
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