突然ですがみなさん、冠詞 (aやthe)をどこまで理解出来ているでしょうか?
正直よくわからない…
そうですよね。
わたし自身、イマイチ知識を整理しきれていない部分があります。
そのため、自身の知識の整理を兼ね、冠詞を記事にまとめてみることにしました。
今回は、
- 楽器にtheがつく理由(play the piano, play the guitar…)
を説明してみました!
theの基本的な機能
まずはtheの基本的な機能を確認してみましょう。
次の例文を見てください。
I have a book. The book is interesting.
(わたしは一冊の本を持っている。その本は面白い)
コレ、なぜtheがついているかわかるでしょうか?
一度出てきた名詞だから!
その通りです。
一度出てきたモノ、同じモノに対してはtheを使う。中学で一番最初に習う説明ですね。
これをもう少し掘り下げて考えてみましょう。
どういうこと?
theには、「それわかるよね」と他のものと区別する機能があるのです。
つまり、the bookという風に表現しているとき、
その本だけどアナタわかるよね。一度会話に出てきたものなんだから、
という気持ちが込められているのです。
the bookには、
「あの本でもなければこの本でもない。他でもないその本なのだ」と
他の本と区別する気持ちが込められているのです。
きちんとした形で記述すると、
theには
- それわかるよね、という了解
- 他のものと区別する気持ち
が込められているのです。
全体の中で対置する機能
次に東西南北の表現について考えてみましょう。
英語の東西南北ですが、次のように全てtheを付けて表現されるのですね。
- the east
- the west
- the south
- the north
どうして?
基本的な考え方は先ほどと同じです。
方位というのは、
- 「それわかるよね」と了解が相手との間にある(東西南北は全世界共通の常識ですね)
- 他の方位と区別する(東は西南北、西は東南北…のように、各方位は独立した形で存在していますね)
という性質を持っていますよね。
たしかに…!
さっきのtheの基本的な機能通りだ!
ここでもう一つtheの機能(ちょっと応用編)を押さえて欲しいのですが、
theには、あるものだけを全体の中で対置する機能があるんですね。
どういうこと?
先ほどの東西南北の例で考えてみましょう。
たとえばthe eastと表現するとき、
「東西南北」という全体の中で、「東」という方角だけを対置している、取り出しているわけですよね。
このように、theには全体の中でのある一部を取り出す機能があるのです。
総称のtheも対置している
theには、総称のtheという機能もあるのですが、根底にある発想は上記と同じです。
The lion is the king of beasts.
( (いろんな動物がいる中での)ライオンは百獣の王である)
この場合、The lionは「ライオンという種族全体」を総称しています。
なので総称のtheという風に呼ばれています。
これは、
「ゾウとかキリンとかシマウマとか、いろんな動物がいる中でライオンはね~」
という気持ちが込められているのです。
で、ここからさらにもう一歩進むと、theには名詞のエッセンスを抽出する機能があるのです。
というと??
The lionと言うとき、特定のライオンを思い浮かべているわけではないですよね。
「ライオン」という種族全体を思い浮かべているのですよね。
「動物園やアフリカにいるライオンという動物一般」を思い浮かべているわけです。
これはつまり、「ライオン」という語が持つ意味合いを抽出し、取り出していると言えますね。
同じように、意味のエッセンスを取り出したtheの表現として下記のようなものがあります。
The pen is mightier than the sword.
(ペンは剣よりも強し
= 「ペン」という名詞から連想される「物を書く」という行為は、「剣」という名詞から連想される「物理的暴力」という行為よりも強い)
これは、「ペン」、「剣」という単語が持つエッセンスを抽出しているわけですね。
楽器の前にtheが付く理由
ここまで来たところで、楽器のtheの説明です。(長かった…笑)
おさらいですが、theには次のような意味合いがあるのでした。
- それわかるよね、という了解
- 他のものと区別する気持ち
- 全体の中の一部を取り出す気持ち
- 単語のエッセンスを取り出す機能
そして、楽器を例文で考えてみましょう。
I play the piano.
(わたしは (ギターとかヴァイオリンとかいろんな楽器がある中で)ピアノを演奏します)
これは、
- それわかるよね、という了解 →当然ピアノは知っているよね
- 他のものと区別する気持ち →ヴァイオリンやギターではなく、ピアノなんだ
- 全体の中の一部を取り出す気持ち →いろんな楽器がある中での、ピアノなんだ
- 単語のエッセンスを取り出す気持ち →ピアノという物体が出す音に注目しているんだ
という気持ちが込められているのですね。
なので、演奏しないときは、楽器にtheがつかないこともあります。
I bought a piano.
(わたしはピアノを一台買いました)
ここでは、ピアノが出す音にあまり注目せず、ピアノを一つのモノとして見ているわけです。
(特に、「4. 単語のエッセンスを取り出す気持ち」が欠けているわけですね)
楽器の演奏でtheがつかない場合とは?
ここからはオマケです。
さらっと読み流して結構です。
なになに??
実は、プロが演奏するときは、「演奏する」場合であっても無冠詞 (theナシ)で使われるのですね。
John played piano.
(ジョンはピアノを演奏した)
* Johnはピアノのプロ、というつもりで読んでください
これは、pianoという単語が持つ動詞的な側面にスポットライトを当てているためです。
無冠詞だと、その単語が持つ動詞的な側面にスポットライトを当てることが出来るのです。
イミワカラン…
例えば次の例文はどうでしょう?
I went to Tokyo by car.
(わたしは東京に車で行った)
これは「~で」という手段を表すbyです。
このとき、byの後ろの名詞は無冠詞で使われる、ということを学校の授業で習ったことと思います。
そういえば…
これは、車が持つ「移動する」という動詞的な側面に注目しているからなのですね。
動詞に冠詞が付かないことからもわかるように、無冠詞で使われた名詞は、動詞的な意味合いを持つことがあるのです。
※この話については、過去の記事で詳しく説明しています。
参考記事:【目からウロコ!】by carやhave breakfastが無冠詞の理由とは
ここで、先ほどの楽器の演奏に話を戻しましょう。
プロの場合は、主語と楽器とが一体になって演奏をするのですね。ムチャクチャ滑らかに奏でられるわけです。
だからプロの演奏は無冠詞になる、演奏という動詞的な行為にスポットライトがあたるため、プロの演奏は無冠詞になるというわけです。
(註:ちなみに、最近だと素人の演奏も無冠詞で表現することも多いようです)
おわりに
いかがでしたか?
冠詞って奥が深いですよね。個人的には、日本人が英語を学ぶ際の一番の難関だと思っています。
ただ、日常的に使ったり、大学受験を突破するためだけであれば、そこまでこだわる必要もないとは思います。(細かいコトにこだわり過ぎて、他の大切なコトがおざなりになるのはNGです)
なので冠詞は、英語学習を一通り終えた中~上級者が「よっしゃやったるか!」と取り組むくらいが良いと思います。
冠詞については話が尽きることはないので、また別の機会に取り上げたいと思います。
冠詞についてさらに詳しく学びたい方には、aとtheの底力 — 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界がおススメです。
わたしが今まで読んだ冠詞系の本の中で、一番わかりやすい&本質に迫った説明がなされていると感じました。一般の書店にはあまりないのですが、ぜひ一度お読みすることをおススメします。
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