今回は比較級の表現を品詞から考えてみたいと思います。
わかっていそうで意外とわかっていないのが比較級。
今回は、thanを使った表現を品詞から見ていきたいと思います。特に比較の強調は、品詞から考えないと少し混乱してしまいます。
【品詞で考える】比較級の意味・使い方のまとめ
まずは比較級の意味・使い方のまとめの全体像を見ていきましょう。品詞にも注目です
<more系の表現>
- 副詞/形容詞語尾に-er:~より…だ(強める方向)
- more 副詞/形容詞 than:~より…だ(強める方向)
- more 名詞 than:~より…だ(強める方向)
⇒品詞:1, 2の-er/moreは副詞、3は形容詞
- less 副詞/形容詞 than:~より…でない(弱める方向)
- less 単数名詞 than:~より…でない(弱める方向)
⇒品詞:1の-er/lessは副詞、2は形容詞
<強調表現>
- 比較級の強調表現:much / far / by far / far and away / even / still / a lot / lots / a great deal / a good deal / yet…
- ただし、”more 名詞”のパターンでは、名詞が可算名詞なら”many more 名詞”、不可算名詞なら”much more 名詞”とする
⇒品詞:1, 2とも副詞
⇒品詞:thanは原則全て接続詞、前置詞的に働くこともある
例文付きで順番に見ていきましょう。
more系/less系の表現
まずはmore系の表現です。全て語句を強める方向に働きます。
副詞/形容詞語尾に-er:~より…だ
副詞/形容詞の語尾に-erをつけると「~より…だ」という意味になります。
下記が例文です。-er表現自体は、上が形容詞、下が副詞として機能しています。
He is stronger than I.
= He is stronger than me.
(彼はわたしより強い)
He can run faster than I.
= He can run faster than me.
(彼はわたしより速く走れる)
さらにthanの品詞を考えていきます。
例えば、上の例文を見てみましょう。HeとIを比べて、「Heの方がより強い」と言っているわけですね。比較の表現は文構造同士を比較するのが基本です。
thanの前後でHe is strongとI am strongを比較していることに注目してください。同じことを二度言うのはくどいので、am strong部分を省略したのが例文のIの正体です。
ということは、thanの品詞は?
He is strong / I am strongという二つの文をつないでいますね。He is stronger than I (am strong)のように、二つの文をつないでいるのでthanは接続詞です。
ただ、くだけた言い方ではthan meとしてもOKなんですね。thanの前後でHe is strong / meという非対称な文構造になっても、くだけた表現ではOKということになっています。
さてここで問題。than meのとき、thanの品詞は?
うーん…
than meのとき、thanは前置詞です。
たとえば前置詞toで、to meなんて表現はよく見ると思いますが、to Iとは言いませんよね。これは、主格であるIが前置詞toの目的語の位置にきているので、目的格meに変化したためです。前置詞の目的語なんて言い方もされるように、前置詞の後ろの人称代名詞は目的格に変化するのです。
than meも、thanが前置詞なので目的格meが使われているというコトですね。
more 副詞/形容詞 than:~より…だ
長めの単語のとき(一般的には二音節以上のとき)、-erではなくmoreを使います。意味は同じく「~より…だ」です。
He is more polite than she.
(彼は彼女よりも礼儀正しい)
moreの後ろには形容詞か副詞が入ります。ということは、moreは副詞ですね。今回の例文であれば、more→polite「より→礼儀正しい」と、形容詞を修飾しているわけですから。
thanは先ほどと同じく接続詞。やはり、he is polite / she is politeという二つの文をつなぐ役割をしています。
more 名詞 than:~より…だ
次は、moreの後ろに名詞がくるパターンです。
He has more books than I.
(彼はわたしよりも多くの本を持っている)
moreが修飾しているのはbooksという名詞です。「より多くの→本」という関係ですね。
名詞を修飾しているので、moreは形容詞です。
先ほどまでのパターンでは形容詞や副詞を修飾していたので、moreは副詞でした。ただ、今回は名詞を修飾しているので、moreは形容詞。moreの直後の単語次第で、moreの品詞って変わるんですね。
なお、thanは先ほどまでと同じく接続詞です。
less 副詞/形容詞 than:~より…でない
次はmoreと逆の表現、lessの例文です。
He is less strong than I.
= He is less strong than me.
(彼はわたしより弱い
= 彼はわたしより強くない)
more系の表現では、「より強い」とstrongを強める方向に機能するのでした。ただ、less系の表現はその真逆。「より強くない=より弱い」とstrongを弱める方向に機能するんです。
なお、more系では、単語が短ければ-erとしていましたが、less系では全て頭にlessを付けるだけです。語尾が変化することはありません。
今回のパターンであれば、lessの後ろに形容詞 / 副詞がきているので、lessは副詞です。
thanはこれまで通り、接続詞ですね。
less 単数名詞 than:~より…でない
次はless 単数名詞 thanです。
これは少し注意が必要で、
数が少ない場合は fewer 複数名詞 than
量が少ない場合は less 単数名詞 thanを使います。
(くだけた言い方ではless 複数名詞 thanもあるようですが)
There were fewer cars on the road than we had expected.
(私たちが予測していたよりも、道路の車の数は少なかった)
A shower uses less water than a bath.
(シャワーの方が、お風呂よりもお湯をあまり使わない)
fewer/lessは名詞cars/waterを修飾しているので形容詞、thanは前後の文をつないでいるので接続詞ですね。
強調表現
比較級には強調表現というものがあります。下記の単語を比較級の前に置くことで、比較級の意味を強めることが出来るんですね。
<強調表現>
- 比較級の強調表現:much / far / by far / far and away / even / still / a lot / lots / a great deal / a good deal / yet…
- ただし、”more 名詞”のパターンでは、名詞が可算名詞なら”many more 名詞”、不可算名詞なら”much more 名詞”とする
⇒品詞:1, 2とも副詞
比較級の強調表現
比較級の強調表現です。
例文はコチラです。
He is much taller than I.
(彼はわたしよりずっと背が高い)
muchがtallerを「むっちゃ→より高い」と修飾していますね。tallerは形容詞なので、muchは副詞というコトになります。
比較の強調表現には、他にもfar / by far / far and away / even / still / a lot / lots / a great deal / a good deal / yet…などがあります。
比較級や最上級の強調表現は、下記の記事に詳しくまとめてあります。とても読みやすいので、ぜひ目を通してみてくださいね。
many moreかmuch moreか
比較級を強調したければ、
とりあえずmuchを使えば問題なさそうだね!
ところが、そうもいかないケースがあるのです。それは、後ろに名詞が続くパターン。
- 名詞が可算名詞のときはmany more A
- 名詞が不可算名詞のときはmuch more A
としなければいけないのですね。
例文はコチラです。
booksは可算名詞なので、manyを使っています。
He has many more books than I.
(彼はわたしよりはるかに多くの本を持っている)
informationは不可算名詞なので、muchを使っています。
He has much more information than I.
(彼はわたしよりはるかに多くの情報を持っている)
なお、ここでのmanyやmuchは形容詞を修飾しているので、副詞と考えてよいです。辞書のmanyの項目に「副詞」の記述があることは少ないのです。
ただ、オーレックス英和辞典 第2版新装版には
manyは「ずっと、はるかに」の意味で副詞的に使われているとみなしてよい
との記載がありました。
おわりに
いかがでしたか?
普段品詞を意識することはあまりないかもしれませんが、熟語などを覚えていて「?」と思う瞬間があったら、一度品詞分解してみることをオススメします。文法ってよくできているもので、それでたいていは「なるほど!」と理解できたりします。
コメント
[…] <参考記事>thanの強調表現を品詞から考える […]