こんにちは。前回に引き続きitの特殊な用法です。
- 漠然とした状況を表すit(天候、時間、距離など)
- 形式it(主語 / 目的語)
- 強調構文のit
今回の記事では、「2.形式it」(または仮のitとも呼びます)を扱います。
<他記事はコチラ>
形式itとは?
そもそも、形式it(参考書によっては仮のitとも言います)という名称は聞いたことがありますか?

あるような、ないような…
ひとことで言うと、形式itとは意味のないitのことです。
訳す必要がないんですね。
ただ、「ある目的」のために置かれているんです。

「ある目的」とは?
文章のバランスを整えることです。
形式itを置くことによって、文章のリズムやバランスを整えることができるんですね。
いくつかパターンがありますので、一つずつ見ていきましょう。
形式itの種類
さて、形式itですが、大きく2パターンに分けられます。
- itが主語にくるパターン(形式主語)
- itが目的語にくるパターン(形式目的語)
まずは「itが主語にくるパターン」から見ていきます。
itが主語にくるパターン(形式主語)
例文を見てみましょう。
It is easy to solve the problem.
(その問題を解くことは、簡単だ)
なぜこの訳になるかわかるでしょうか?
ポイントは、“to solve the problem”を”it”に代入して訳していることです。

代入して訳す??
まず、“to solve the problem”だけを訳すと、「その問題を解くこと」という訳になります。
そして、この”to solve the problem”を”it”の位置にあるものとして訳すんです。
具体的に手順を示すとこうです。
① It is easy to solve the problem. (元の文章)
② To solve the problem is easy. (to~をitへ代入した後の文章)
どうです?
元の文章の”it”の位置に、”to solve the problem”がきていますね。
“to solve the problem”は主語の位置にきています。
主語の位置にきているので、「その問題を解くことは」と訳せます。
“is easy”はそのまま訳しましょう。「簡単だ」くらいの訳でOKです。
つまり、文章全体の訳は、「その問題を解くことは、簡単だ」となるわけです。
itは直接訳さない。itがあった位置に、他のカタマリを代入して考える。
これは形式it全てに共通する基本的な訳し方です。
なお、形式主語itにも下記の通りいくつかパターンがあります。
せっかくなのでサクッと見ていきましょう。
- to不定詞
- 動名詞
- that節
- wh-節
- seem型
形式主語it:to不定詞
これは先ほど取り上げたものですね。“to~”の部分をitへ代入するパターンです。
It is easy to solve the problem. (その問題を解くことは簡単だ)
→To solve the problem is easy.
“to solve the problem”は、「不定詞」と呼ばれるもののカタマリです。
これをitへ代入しています。
形式主語it:that節
今度は、“that~”の部分をitへ代入するパターンです。
It is clear that something happened. (何かが起きたということは、明らかだ)
→That something happened is clear.
“that something happened”は「何かが起きたということ」と訳せますね。そして、文章全体を訳す際は、これをitの位置へ代入してしているわけです。
形式主語it:wh-節
“wh-節”の部分をitへ代入するパターンです。
wh-節とは、whetherやwho、what、whenなどのカタマリのことです。
It is unclear whether he loves her. (彼が彼女を愛しているのかどうかは、わからない)
これは、”whether~”という「~するかどうか」というカタマリを”it”へ代入して訳しています。
他には、こんな例文もあります。”who~”というカタマリを”it”へ代入して訳しているのがポイントですね。
It doesn’t matter who he is. (彼が誰かということは、問題ではない)
形式主語it:seem型
形式主語itのラストはこちら。
seemsとセットで使われ、”that~”の部分をitへ代入するパターンです。
It seems that he knows the secret. (彼はその秘密を知っているようだ)
“seem”は「~のようだ」という意味の単語です。
“it seems that~”は定型表現として考えた方が良いかもしれません。
形としては見えづらいですが、やはり”it”自体に意味がなく、
that節以下のものが代入される形となっています。
itが主語にくるパターン(形式目的語)
これまで見てきたのは全て、itが主語に位置にあるパターンでした。
ただ、形式itは目的語の位置にくることもあります。
そのパターンも簡単に紹介していきます。
- find it型
- owe it to you型
- see to it型
- appreciate it型
- take it for granted型
形式目的語it:find it型
形式目的語itとしては、こちらが頻出のパターンです。
I found it difficult to solve the problem. (わたしはその問題を解くことが難しいとわかった)
まず、“find O C”で「OがCだとわかる」と訳せます。
“find it difficult”をそのまま訳したら「それが難しいとわかる」となるわけです。
しかし、今回は最後に”to solve the problem”というカタマリがあり、
“it”を「それ」と訳してしまうと最後のカタマリが浮いてしまいます。
そこで、”to solve the problem”を”it”へ代入するパターンではないか、
と考えてみるとキレイに訳すことができます。
形式目的語it:owe it to you型
サクサクいきましょう。
I owe it to you that I got the job.
(わたしは、わたしが仕事を得たことをあなたに負っている
≒直訳:わたしが仕事を得たのはあなたのおかげだ)
“owe O to 人”で「Oを人に負っている、Oは人のおかげである」と訳します。
owe(オゥ)が負うという意味を持っているなんて、なんだかおもしろいですね。
あとは”that I got the job”を”it”へ代入して訳せばOKです。
直訳だと少し日本語がおかしいので、適当に手直しして訳しましょう。
形式目的語it:see to it型
次はコチラ。これもある種の定型表現です。
You must see to it that children wake up at nine.
(あなたは、子どもたちが9時に起きるよう取り計らわなければいけない)
“see to”は「~に気を配る、~を取り計らう」という意味の熟語です。
やはり、”it”に”that children wake up at nine”を代入して訳します。
形式目的語it:appreciate it型
もう一息です。頑張ってください。
I would appreciate it if you would send me a letter.
(わたしは、あなたがわたしに手紙を送ってくれるということを感謝します
≒直訳:もし手紙を送ってくれるのであればありがたいです)
“appreciate”は「感謝する」という意味です。
これも定型表現として覚えてしまいましょう。
ビジネスなど、海外との丁寧なやりとりにぴったりの表現です。
(わたしはよくコピペして使ってます)
直訳するとややおかしくなるので、少し自然な日本語に手直しして訳します。
形式目的語it:take it for granted型
ラストです。
I took it for granted that you would agree.
(わたしは、あなたが賛成するであろうことを当たり前だと考えていた)
これも定型表現ですね。“take O for granted”で「Oを当たり前のことと思う、考える」です。
やはり、”it”に”that you would agree”を代入して訳しています。
おわりに(なぜ形式itが存在するか?)
最後に、「なぜ形式itが存在するか?」ということに触れたいと思います。

どうして形式itなんて使うんだろう?
それはズバリ、「文章のバランスを整えるため」です。記事の初めでも少し言及しましたね。
一番最初の例文をみてください。
① It is easy to solve the problem. (元の文章)
② To solve the problem is easy. (to~をitへ代入した後の文章)
①が形式itを使った文章。②が代入後の文章です。
文法的には、最初からitなんて使わず、②の文章を本当に書いてしまってもOKなんです。
しかし、実際には①の文章が圧倒的に好まれます。
なぜなら、②の文章は、頭の部分が非常にもっさりしてしまっているからです。
たしかに、”To~”というデカいカタマリがいきなり文頭にあって、
なんだか気持ち悪い感じですね。
それを避けるため、いったんitを置いておき、文末に”to~”のカタマリを置く、
という形をとっているのです。
そして、このことは他の形式itでも同じ。
よくよく見ると、”that~”や”to~”のカタマリは、全て文末に置かれています。
文法的には文の途中にこのカタマリを置きたいんだけど、なんだかもっさりしてしまうから、
ひとまずitを置いておこうか。そういう発想で形式itは使用されています。
コレ、並べ替えや和訳問題では、知っていないとできないですね。というわけで入試で狙われるポイントの一つです。
なにより、生の英語に触れていても目にする機会が非常に多い文法事項です。何度も読み返して(出来れば例文を音読して)、ぜひ身体にしみこませてください。
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それでは!
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コメント
[…] itの特殊な用法②(形式it) […]
[…] <参考>itの特殊な用法②(形式it) […]
[…] hatのカタマリを一番語尾に持っていきます。そして実際訳すときには、thatのカタマリがあたかもitの位置にあるかのように訳すんですね。(itの特殊な用法②(形式it)をご覧ください) […]
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