今回はitの特殊用法をまとめてみました。
特殊用法とはなんなのか? どのような意味・用法を持つのか?
サクッと確認していきましょう!
it特殊用法まとめ -天候/時間/距離、形式it、強調構文
itの特殊用法のまとめは下記のとおりです。
- 漠然とした状況を表すit(天候、時間、距離など)
- 形式it(主語 / 目的語)
- 強調構文のit
順番に見ていきましょう!
漠然とした状況を表すit
itというのは、漠然とした状況を指すことができます。その代表例が、天気・時間・距離といったものです。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
天候
天候はitで表します。例文を見てみましょう。
It was really cold yesterday.
(昨日、本当に寒かった)
It gets dark early at this time of the year.
(一年のこの時期、早めに暗くなってしまう)
ここでは“it = 天候(あるいは空の様子)”となっています。
itがくると反射的に「それ」と訳してしまう人もいると思いますが、
ここでは「それ」と訳す必要はありません。
日本語にする際は、itを無視して訳します。
(漠然とした状況を表すitでは全て同じです。itは無視して訳します)
時間
時間もitで表します。例文で見てみましょう。
What time is it now?
(いま何時?)
It is three o’clock.
(3時だよ)
ここでは“it = 時間”となっていますね。天候の時と要領は同じです。
ちなみに、o’clockというのは、of clockが省略された表現だそうです。直訳すると「時計の〇時」となり、たしかに納得です。
距離
距離もitで表します。いくつか例文を示しましょう。
It is three miles from here.
(ここからは3マイルあります)
It is ten minutes’ walk to the station.
(駅までは徒歩10分です)
やはり、「距離」という漠然としたものがitで表されていますね。
その他
他にも、漠然としたものをitで表すことが出来ます。いくつか例文で示しましょう。
It’s my turn. (わたしの順番だよ)
turnというのは「順番」のことですね。
(遊戯王とかで「俺のターンだ!」なんてセリフがあったと思いますがそれと同じです)
ここでは「順番」という漠然としたものをitで示しています。
他にもいくつか見てみましょう。超有名な歌からの引用です。
Let it be. (あるがままに)
(The Beatles “Let it be”より)
ビートルズの『レット・イット・ビー』ですね。このitは自分の人生をとりまく漠然とした状況を表しています。
で、今回のitの話からはちょっとそれますが、ここで使われている動詞・letの用法も一応解説。
letには、「let O V:OがVすることを許可する」という用法があります。
なので、歌を直訳すると「it (自分の人生を取り巻く漠然とした状況)がbeすること(あること・存在すること)を許す」という感じでしょうか。
それをこなれた訳にすると「あるがままに」、つまり、流れに身を任せて、ということを言っているわけですね。
なお、数年前に流行った“let it go”も同様です。
こちらはVの部分に「go:行く」が使われているので、意味合いとしては少し強い。「もうどうにでもなっちまえ、放っておけ」といった意味になります。
形式it
次に見るのは形式it(参考書によっては仮のitとも言います)です。
なにそれ?
形式itとは意味のないitのことです。訳す必要がないんですね。
ただ、「ある目的」のために置かれているんです。
「ある目的」とは?
文のバランスを整えることです。英語というのは長い部分を後ろに回す傾向があるのですが、ひとまず形式itを置いておいて、文の後半にto Vなどのような長い部分を回すことが出来るのですね。
そして、形式itですが、大きく2パターンに分けられます。
- itが主語にくるパターン(形式主語)
- itが目的語にくるパターン(形式目的語)
順番に見ていきましょう。
itが主語にくるパターン(形式主語)
例文を見てみましょう。
It is easy to solve the problem.
(その問題を解くことは、簡単だ)
なぜこの訳になるかわかるでしょうか?
ポイントは、“to solve the problem”を”it”に代入して訳していることです。
代入して訳す??
まず、“to solve the problem”だけを訳すと、「その問題を解くこと」という訳になります。
そして、この”to solve the problem”を”it”の位置にあるものとして訳すんです。具体的に手順を示すとこうです。
① It is easy to solve the problem. (元の文章)
② To solve the problem is easy. (to~をitへ代入した後の文章)
どうです? 元の文章の”it”の位置に、”to solve the problem”がきていますね。
“to solve the problem”は主語の位置にきています。主語の位置にきているので、「その問題を解くことは」と訳せます。
“is easy”はそのまま訳しましょう。「簡単だ」くらいの訳でOKです。
つまり、文章全体の訳は、「その問題を解くことは、簡単だ」となるわけです。
itは直接訳さない。itがあった位置に、他のカタマリを代入して考える。これは形式it全てに共通する基本的な訳し方です。
なお、形式主語itには、下記の通りいくつかパターンがあります。せっかくなのでサクッと見ていきましょう。
- to不定詞
- 動名詞
- that節
- wh-節
- seem型
形式主語it:to不定詞
これは先ほど取り上げたものですね。“to~”の部分をitへ代入するパターンです。
It is easy to solve the problem. (その問題を解くことは簡単だ)
→To solve the problem is easy.
“to solve the problem”は、「不定詞」と呼ばれるもののカタマリです。
これをitへ代入しています。
形式主語it:that節
今度は、“that~”の部分をitへ代入するパターンです。
It is clear that something happened. (何かが起きたということは、明らかだ)
→That something happened is clear.
“that something happened”は「何かが起きたということ」と訳せますね。そして、文章全体を訳す際は、これをitの位置へ代入してしているわけです。
形式主語it:wh-節
“wh-節”の部分をitへ代入するパターンです。
wh-節とは、whetherやwho、what、whenなどのカタマリのことです。
It is unclear whether he loves her. (彼が彼女を愛しているのかどうかは、わからない)
これは、”whether~”という「~するかどうか」というカタマリを”it”へ代入して訳しています。
他には、こんな例文もあります。”who~”というカタマリを”it”へ代入して訳しているのがポイントですね。
It doesn’t matter who he is. (彼が誰かということは、問題ではない)
形式主語it:seem型
形式主語itのラストはこちら。seemsとセットで使われるパターンです。
It seems that he knows the secret. (彼はその秘密を知っているようだ)
なお、it~thatの形が似ているので、便宜上形式主語で紹介しましたが、厳密にはこれだけ形式主語ではないので要注意です。(That he knows the secret seems.という書き換えができないのですね)
itが目的語にくるパターン(形式目的語)
これまで見てきたのは全て、itが主語に位置にあるパターンでした。
ただ、形式itは目的語の位置にくることもあります。そのパターンも簡単に紹介していきます。
- find it型
- owe it to you型
- see to it型
- appreciate it型
- take it for granted型
find it型
find it型です。形式目的語itとしては、こちらが頻出のパターンです。
I found it difficult to solve the problem. (わたしはその問題を解くことが難しいとわかった)
まず、“find O C”で「OがCだとわかる」と訳せます。”find it difficult”をそのまま訳したら「それが難しいとわかる」となるわけです。
しかし、今回は最後に”to solve the problem”というカタマリがあり、”it”を「それ」と訳してしまうと最後のカタマリが浮いてしまいます。
そこで、”to solve the problem”を”it”へ代入するパターンではないか、と考えてみるとキレイに訳すことができます。
owe it to you型
owe it to you型です。
I owe it to you that I got the job.
(わたしは、わたしが仕事を得たことをあなたに負っている
≒直訳:わたしが仕事を得たのはあなたのおかげだ)
“owe O to 人”で「Oを人に負っている、Oは人のおかげである」と訳します。owe(オゥ)が負うという意味を持っているなんて、なんだかおもしろいですね。
あとは”that I got the job”を”it”へ代入して訳せばOKです。直訳だと少し日本語がおかしいので、「おかげだ」くらいに訳すことが多いです。
see to it型
see to it型です。
You must see to it that children wake up at nine.
(あなたは、子どもたちが9時に起きるよう取り計らわなければいけない)
“see to”は「~に気を配る、~を取り計らう」という意味の熟語です。やはり、”it”に”that children wake up at nine”を代入して訳します。
appreciate it型
appreciate it型です。
I would appreciate it if you would send me a letter.
(わたしは、あなたがわたしに手紙を送ってくれるということを感謝します
≒直訳:もし手紙を送ってくれるのであればありがたいです)
“appreciate”は「感謝する」という意味です。itがif以下の内容を受けているのですね。
これも定型表現として覚えてしまいましょう。ビジネスなど、海外との丁寧なやりとりにぴったりの表現です。(わたしはよくコピペして使ってます)
直訳するとややおかしくなるので、少し自然な日本語に手直しして訳します。
take it for granted型
最後に、take it for granted型です。
I took it for granted that you would agree.
(わたしは、あなたが賛成するであろうことを当たり前だと考えていた)
これも定型表現ですね。“take O for granted”で「Oを当たり前のことと思う、考える」です。
やはり、”it”に”that you would agree”を代入して訳しています。
強調構文のit
最後に強調構文です。
強調構文とは、ズバリその名の通り、言いたいコトをあえて強調する文です。
二つの例文を見比べてみましょう。
We visited New York yesterday. (わたしたちは昨日ニューヨークを訪れた)
It was New York that we visited. (わたしたちが昨日訪れたのは、ニューヨークだった)
まず上の例文から。「わたしたちはニューヨークを訪れた」という普通の文章です。
それで、それを踏まえたうえで下の和訳を見てみましょう。
「わたしたちが訪れたのは、ニューヨークだった」
これ、文章の内容自体は上の文章とそれほど違わないんですよ。ただ、「ニューヨーク」という地名が強調されているんですね。
「ぼくたちが昨日いったのはね…なんとあのニューヨークさ!」的な。
ニューヨークへ行ったんだぜ!(ドヤア
この文章の書き手は、「ニューヨーク」へ行ったことを強調したいわけです。
で、なぜこんな訳になるかと言えば、”New York”という単語が“it is XX that~”という構文に挟まれているから。
この強調構文、元は”We visited New York.”という文章を前提にしているんです。
そこから”New York”だけを抜き出し、”XX”の部分に挟み込む。残りの部分は”that we visited yesterday.”と、元の文から”New York”だけを抜いた文をそのまま置く。
これが強調構文です。作り方を整理しましょう。
- 元になる文章を用意する。(We visited New York yesterday.)
- 強調したい部分を”it is XX that~”に挟み込み、残りをそのまま後ろへ持ってくる。(It was New York that we visited yesterday.)
察しの良い方はお気づきかもしれませんが、別にこれ、”we”や”yesterday”を間に挟んでも良いんです。
It was we that visited New York yesterday. (昨日ニューヨークを訪れたのは、わたしたちだ)
It was yesterday that we visited New York. (わたしたちがニューヨークを訪れたのは、昨日のことだ)
それぞれ強調している部分が違うだけで、根本的な内容は同じです。
なお、動詞を間に挟み込むことは出来ません(OKなのは名詞、代名詞、副詞)。試しに”visited”を挟んでみればわかりますが、たしかに意味や形がヘンになりますよね。
強調構文のパターン
基礎を説明したところで、強調構文のパターンも一通り紹介しておきます。
- it is XX that~の基本形(thatの代わりにwhichやwhoも可)
- 疑問詞 is it that~?
- it is not until… that~
よくわからん、うへえ
わかりやすく説明するから安心してください。
it is XX that~の基本形
これは先ほどで説明したものです。
なお、強調されるものが人の場合はwho、モノの場合はwhichを使用することもできます。(whichを使うことはあまりないですが)
一応例文で書き換えを紹介します。
We visited New York yesterday.
(わたしたちは昨日ニューヨークを訪れた)
It was we that visited New York yesterday.
(昨日ニューヨークを訪れたのは、わたしたちだった)
It was we who visited New York yesterday.
(上の例文と同じ。thatの代わりにwhoを使用)
It was New York that we visited yesterday.
(わたしたちが昨日訪れたのは、ニューヨークだった)
It was New York which we visited yesterday.
(上の例文と同じ。thatの代わりにwhichを使用)
It was yesterday that we visited New York.
(わたしたちがニューヨークを訪れたのは、昨日のことだった)
疑問詞 is it that~?
疑問文にするときは、下記の例文のようにします。
What is it that you want to do?
(きみがやりたいのは、一体何なのだ?)
本当は”Is it what that you want to do?”とやりたいのです。「一体何なの?」と”what”を強調したいわけですから。
ただ、「疑問文では疑問詞を前に出さねければいけない」というルールがあるので、仕方なく”what”が前に出て、”What is it that~”という語順になったのです。
見かけ上は、”is it that”と、間に挟まれている単語がありませんね。これは”what”が先頭へ抜けてしまったためです。
ぱっと見た感じの形は違いますが、根底にある考え方は基本形と同じです。
it is not until…that~
“it is not until…that~”で、「…してはじめて、~する」と訳します。
一種の定型表現です。例文はコチラ。
It was not untilI came to Japan thatI learned Moe.
(わたしが萌えを学んだのは、わたしが日本へ来てからのことだった)
どうしてこんな訳になるの??
そうですね。これも強調構文の一種ですので、まずは元となった文から考えていきましょう。
I did not learn Moe until I came to Japan.
(わたしが日本へくるまで、わたしは萌えを学ばなかった)
It was not until I came to Japan that I learned Moe.
(わたしが萌えを学んだのは、わたしが日本へ来てからのことだった)
上の方の文を見てください。”until”は「~するまでずっと」という意味です。なので、”until I came to Japan”を直訳すると、「日本へくるまでずっと」です。
これを文の前半部分と一緒に訳すと、「日本へくるまでずっと、わたしは萌えを学ばなかった」となるわけです。
で、これを強調構文にしたのが下の文。なんと、“not until I came to Japan”を丸ごと”it is XX that”構文に挟み込んでしまったのですね。
なんか変な感じですし、頭の中がごちゃごちゃになりそうです。そんなときは、元となった文を自分で考えてみましょう。
元の文は比較的訳しやすいハズですから。その結果、”I did not learn Moe until~.”という文をひねり出し、それを訳せば大体OK。あとは強調構文っぽく訳してしまいましょう。
強調される内容を文末へ持ってきて訳すとそれらしくなります。
なお、not untilのほかにも”It is only when…that~”、”It is only after…that~”などの表現がありますが、基本的な訳や考え方は同じです。
まとめ
いかがでしたか? 長くなったので、最後に要点だけを再掲しておきます。
まずは全体像です。
- 漠然とした状況を表すit(天候、時間、距離など)
- 形式it(主語 / 目的語)
- 強調構文のit
次に形式itのパターンです。
<全体像>
- itが主語にくるパターン(形式主語)
- itが目的語にくるパターン(形式目的語)
<形式主語のパターン>
- to不定詞
- 動名詞
- that節
- wh-節
- seem型
<形式目的語のパターン>
- find it型
- owe it to you型
- see to it型
- appreciate it型
- take it for granted型
最後に強調構文のパターンです。
<作り方>
- 元になる文章を用意する。(We visited New York yesterday.)
- 強調したい部分を”it is XX that~”に挟み込み、残りをそのまま後ろへ持ってくる。(It was New York that we visited yesterday.)
<強調構文パターン>
- it is XX that~の基本形(thatの代わりにwhichやwhoも可)
- 疑問詞 is it that~?
- it is not until… that~
コメント
[…] itの特殊な用法②(形式it) […]
[…] <参考>itの特殊な用法②(形式it) […]
[…] hatのカタマリを一番語尾に持っていきます。そして実際訳すときには、thatのカタマリがあたかもitの位置にあるかのように訳すんですね。(itの特殊な用法②(形式it)をご覧ください) […]
[…] <参考>形式itについて […]
[…] itの特殊な用法(形式主語) […]
[…] 形式it / 仮のit […]
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